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私の顔に少しかかっている髪の毛をきれいに頭へ撫で付け 麻生君は両手で私の顔を包み込んだ。
暖かく大好きな手で。
彼の深くて澄んだ瞳は 私の目を正面からとらえ
間を置かず ついばむようにやさしいキスが降り注がれる。
この人の心のように それはやさしい泣きたくなるような キス。
やさしく急かされるように私はついた嘘を告白する。
麻生君の目を見て話し始めると
彼は私の真意をはかっているかのごとく何も見逃さないように目を覗き込む。
それは仕事での鋭さはなくこの人の包容力を溢れさせて。
「ごめんなさい。嘘をつきました」
深く息を吸う。
「婚約者も付き合っている人もいません」
一瞬彼の瞳が揺れる。
「...続けて」
彼の反応を見て次の言葉が出てこない私に
彼が即す。
彼の目は黒く光り表情は変わらず感情は見えない。
「....私には父以外に何もいらなかったから。その生活をどうしても守りたかったの」
自分の思いに集中したくて一度目を逸らした。
彼の視線を感じる。
母が出ていってから父が転職したきっかけ
父のやさしさ
私の思い
行動。
大学生の時大学を暫く休んでいた頃に起こっていた事。
父が亡くなる前に言われた事。
自分の思い。
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