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食い入るように私を見つめてかわいいって繰り返しつぶやく。言われ過ぎて居たたまれなくて。
「これからは俺がいる。京香のお父さんに負けないほど京香だけをを愛し続ける自信がある。信じて欲しい」
彼の前髪が揺れ気がつくと
一つだけそっと触れるだけのキスを落とし切なそうに私を見つめた。
父に負けないほど愛し続ける
そんな人が存在するの....?
そんなに愛してくれるの?
「これからは何だって俺に分けてくれ。幸せも悲しみも苦しみも。お前のくれるものなら何だって受けとめる」
やさしく頭を撫でながら蕩けるような声で言ってくれるやさしい人。
洞察力の宿る目には今も沢山の切なさを浮かべて。現実とは思えない展開に頭がついて行けず夢心地になってしまう。
地に足を着けようと現実を振り返る。
お父さん...
いつだって私の生きる光で全てだった。いつまでも二人で生きて行きたいほどに。父の役にたつのが私の目標で喜んでもらえれば誇らしくてもっと頑張りたくなって。
次の伴侶を持つ道もあったのに私の独占欲でそのチャンスを潰されて。ちょっとは気づいていたんだと思う。私が必死に魅力的な女性客と父との交流を阻止した接客のあと 父は決まってやさしく笑って頭を撫でた。時にはありがとうと言ってくれた事だってあった。
今思えば あれは本当の感謝の気持ちじゃなくて私をねぎらう為のやさしさだったように思える。
本当に
本当に素敵な父だった。
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