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そういうこと
翌日私の携帯電話に谷口さんの伯母と名乗る人から連絡があり謝罪され その上で麻生君を交えて四人で会うことになった。
谷口さんの伯母さんがどこかカフェでと言うので私がうちの店にと誘った。
「本当に申し訳ありませんでした」
谷口さんが強ばった表情のまま頭を下げた。
久しぶりに空気を入れ替えて掃除をしたカフェに当たり前のようにいつものコーヒーの薫りが我が物顔で漂う。
隙のない厳しい表情の麻生君が私の隣に座り テーブルをはさんで所在なさげな様子の谷口さんと固い表情の伯母さんが菓子折りを差し出して並んで座っていた。
伯母と言うよりお姉さんと言うのがぴったりで
谷口さんと似た美しいモテそうな人。
谷口さんを初めて見た時にも思っていたけど父目当で来ていたお客さんに似たタイプで、谷口さんの伯母さんがうちの喫茶店の椅子に座っているのには既視感があった。
まさか…。
「覚えてますか?何度かお会いしてます」
申し訳無さそうに、懐かしそうに伯母さんが言う。
「やっぱり…」
やっぱり私が小、中学生の頃 父を目当てで来ていた性格の良さそうなお客さん…。
声をつまらせながら伯母さんが言った。
「…お父様お亡くなりになったんですね」
かすれた声で この人なりに本気で悲しんでくれている事が伝わってくる。
私も悲しみが込み上げてきて
どうにか息をのみ込んだ。
谷口さんの謝罪が一通り済んでから 谷口さんの伯母さんは話し出した。
「今回の事、本当に申し訳ありませんでした。この事、実は私が無関係じゃないんです。」
麻生君が怪訝な顔をする。
「新入社員で配属されたのが有馬チーフの部署だったんです。お子さんがいらっしゃるけど離婚されてるとは聞いていました。尊敬して慕ってて。なのに突然会社を辞められてからすごくショックで」
父の会社は確か外資だった、チーフってつまり係長か、10才位差かな…とか思いながら聞く。
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