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三味線と琴の音、酔った人々の笑い声、女のように美しく着飾った青年や少年たちの艶やかな姿、そして彼らの喘ぎに彩られて毎晩お祭り騒ぎだ。
一般社会には隠しておかなければならない世界だから、口外できない。
もっとも、自分も女形として振る舞っているなんて、恥ずかしくて地元の後輩に言えるはずもない。言ったところでだれも信じないだろうけれど。
小学生の頃から素行の悪かった眞尋は、表向きには、不良ばかりをぶち込む矯正施設に入ったことになっている。
普段は退屈な生活を送っていると思ったのか、綾人は笑顔を作り、提案してきた。
「じゃあ、今日はパーッと遊びましょうよ!」
「おぅ、いいな」
「航大も呼びますよ。眞尋さんが今帰ってきてるって知ったら、絶対飛んできます!」
綾人はスマートフォンを取りだし、さっそく連絡する。
ふたりで歩を止めるとショーウインドウに映りこむ、眞尋たちの姿。眞尋はジャージにスニーカー、つばを後ろに向けた野球帽。鎖骨を過ぎる長さの金髪は、だいぶ根元が黒くなってきたから、そろそろ脱色しないといけない。
綾人はラフなトレーナーに半ジャージ、足元はクロックス。髪は茶髪。揺れるピアスは眞尋のピアスよりも大ぶりなものだった。
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