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「育ててくれた、爺さんと婆さんのところにも……会いに行くし、ピアノも続ける。育ての親もピアノも、俺にとって数少ない大切なもので、好きだと思えることだから」
本音を伝えた照れくささをごまかしたくて、理夏はふたたび歩きはじめた。眞尋も歩きだす。その表情は微笑んでいる。
「いいと思うぜ。俺も一度、ちゃんと理夏のじーちゃんとばーちゃんに挨拶しねーとだしなぁ」
「ついてきてくれるのか」
それは心強い。やっぱり、何年かぶりに一人で会いに行くのは緊張する。無事に生きている姿を見せたいから、なるべく早く行かなければいけないが……。
「当ったり前だろ。理夏んこと、一生大事にするんだからよ」
「そういうこと……外で……大きい声で言うな……」
嬉しいけれど、恥ずかしい。
(俺だって……眞尋をずっと大切にしたい──蜷川会の次期会長を支える、姐さんになりたいと思う……)
眞尋と違って、理夏はとても本人には伝えられなくて、心のなかで呟いた。そのうち……この気持ちも明かしたい。
アウディの後部座席にふたりで乗りこむと、運転席の瞬は何だか嬉しそうだ。
「若! 理夏さん! 朝から仲良しですね、安泰ですねっ!」
眞尋は車内のクズかごにパイポを捨ててから、運転席を後ろから蹴る。
「何が安泰なんだよ、わけわかんねーこと言ってんじゃねぇし!」
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