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そこに航大が加わるのに、時間はかからない──カットソーとさわやかなポロシャツをを重ね着して、チノパン、スニーカー。黒髪に眼鏡。ピアスの穴はない。
素行の悪そうな高校生には見えないが、最近は航大のように、真面目そうな見ための『不良』も多い。
航大は抱きつかんばかりの勢いで駆け寄ってきた。
「眞尋せんぱ~い!!!」
大きな声を出すので、すれ違う人々のなかには、訝しげな目を向ける者もいる。眞尋はジャージのポケットに手を突っこんだまま、そっと航大を避けた。
「うるせぇなぁ、みんなこっち見てんだろって……」
ぶっきらぼうに言ってしまうのは、照れ隠しでもある。航大は目を輝かせる。
「だって! ひさしぶりに会えて嬉しいんですっ、先輩は俺らのガチヒーローっすもん!」
航大に共鳴するように、綾人も熱く語ってみせた。
「漢って書いて、ヒーローだよなー! しかも男じゃなくて漢字の方の漢!」
「ははっ……なんだそりゃよー」
眞尋は苦笑する。どうも、彼らにはヤンキー漫画の主人公のように受け取られているらしい。
まったく自慢できる話ではないが、たびたび警察のお世話になり、遊郭にぶちこまれてからも里帰りの度にいろいろと暴れてきたせいだ。
しかし、新学期が始まれば眞尋も高三……最近は、さすがにずいぶんと落ち着いてきた。
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