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「理夏にも思うところがあるのは分かる……だけどな、組のことに首を突っこんだり、掻きまわすのは、もう止めにしないか?」
提案する口調は優しい。
「こんな日々を送っていたら、じきに命も失うかもしれない……理夏には、理夏らしい人生を送ってほしいんだ」
「ふっ……黙れよ」
親身に語る智秋とは裏腹に、理夏は皮肉げに笑った。
「俺らしく? よく言う……俺の人生が壊れたのは梧桐一家のせいでもあるのに……」
その言いぶんに、眞尋は首を傾げてしまう。
(……いったい……コイツは、どんな過去を生きてきたんだよ……?)
見当もつかなかった。理夏の言動の端々だったり、眼光の仄暗さ、纏う陰から漂う『闇』の正体が──分からない。
本当に、まずは話を聞いてやりたかった。
組を潰す誘いには乗れないし、事情を知ったところで理夏に対して何をしてやれるのか、何ができるのかは分からないが、まずは知らなければ始まらない。
智秋は心底申しわけなさそうに表情を歪める。
「すまなかったと思っている……だが、まだ十七歳だ、やり直せるさ」
「謝罪されても、こうやって強引に連れて行くヤツの言葉なんて、信じられない」
「こうでもしないと、理夏とは話せないし、会えないんだ。深瀬は、理夏の居場所を俺たちに隠そうとする」
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