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「深瀬は、おなじヤクザでも、智秋たちよりはマシだ」
「深瀬のことは信頼しているんだな」
「二年前だって俺を助けてくれた……上海まで迎えに来てくれたのは深瀬だったんだ」
理夏はスマホを取りだし、握りしめた。
それとほぼ同時に、前を走るBMWが急ブレーキを踏む。対向車線からやってきた三台のベンツが道を塞ぐように停まったからだ。眞尋たちの乗っている車も、停まらざるを得なくなる。
衝撃に揺れる車内、さすがに眞尋も声を上げた。
「おいっ、なっ……なんなんだよ一体!!」
智秋はハッとした顔で、理夏のスマホに視線を落とす。
「まさか……理夏、GPSか……?」
智秋のそんな顔を見ると、満足したように、理夏は唇をゆるめた。
「深瀬は呼べば来てくれる……あんたとは違うんだ……」
車に乗せられてから、さりげなくスマホを触るふりをして、深瀬とやらに位置情報を送信したのかもしれない。目の前のベンツの群れから下りてくるのは、明らかにヤクザとおぼしきスーツ姿の連中だ。理夏を助けにきたのか──
眞尋は理夏に対し(やるじゃねぇか)と思いもしたが、手放しで喜んでいいのかも分からない。
早く帰りたいのは確かだが、智秋は悪い男には見えないし、話し合いも済んでいない。
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