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眞尋はぽつんと立つバス停を見つける。それは現在地を把握する目印になる。
「おっ、近くに古りぃ神社あっからよー、行こうぜ。雨宿りもできるしよ」
さっそく草履の踵を返し、草むらに入っていく眞尋に、理夏は「古い神社?」と聞き返す。
「夜更けにそんなところにいって、ヤバくないのか……」
「なんだぁ、てめぇ、怖えぇのか?」
「別に……」
不満そうにしながらも、理夏は眞尋についてきてくれる。眞尋は両手を広げて話す。
「平気だって! たぶん、イイ神さまがいるんだよなー、そこに賽銭入れて馬券当たったこと何回あると思ってんだよ!」
「馬券って……未成年だろう」
呆れた様子でスマホを取りだして、森を歩く明かりにしてくれた。
「なんだよ、意外に真面目なんだなぁ、てめぇさぁ!」
「俺は、眞尋みたいにヤンキーじゃない……」
目的の神社はそれほど大きな社ではないし、朽ちかけてはいたが、夜になると明かりがつく。
闇に浮かぶ灯籠の灯が、ちらちらとおぼろげに見えてきた。
雨は強くなっていくばかりで、お互いにかなり濡れている。足元もじっとりと水を含んで滑りやすくなって、鳥居も見えてきたところで、理夏がつまずいた。ぐらりと傾ぐ身体。
眞尋はとっさに理夏の手を握る。
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