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「おいっ、危ねぇぞっ──……理夏!」
重力には抗えず、ふたりで派手に転んでしまう。
同時にまばゆく光る夜空。少し遅れて、雷鳴も響き渡った。
◆ ◆ ◆
神楽殿に上がり、眞尋は汚れた着物を脱いで襦袢姿になる。
その隣で、理夏はスマホをカーディガンの袖でごしごしと拭く。眞尋は画面を覗きこむ。
「やっぱダメなん?」
「あぁ……」
地面に叩きつけられた理夏のスマホは真っ暗なままで、壊れてしまったらしい。
眞尋は自分にも責任があると思い「ごめんな」と謝った。
「もうちょい、ゆっくり歩きゃよかったよな……」
さらには、ふたりとも所々を擦りむいてしまって、眞尋の膝はまだヒリヒリと痛む。
「それか……やっぱ車のそばにいたほうが良かったのかもしんねぇ」
理夏は首を横に振った。黒髪はしっとりと水気を帯びて、雫が滴る。
「いや、巻きこまれたくないし、落ち着くまでは離れてたほうがいい……」
道路の方角からいまも響いてくる、罵りあう怒声。雷雨にまみれて、さらなる修羅場となっていることは現場を見なくとも分かる。
諦めたらしく、理夏は静かにスマホを置いた。
「……静かになったら、戻ってみよう。それまではここで待機する」
「おうっ、分かった」
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