第一章 夜半の邂逅 3

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 眞尋は頷き、あぐらをかく。神楽殿に上がるときに草履も脱いだので素足だ。  男たちの声を聞きながら、眞尋は先程の智秋の言葉を思いだす。 『こんな日々を送っていたら、じきに命も失うかもしれない』  ……もっともだと思う。  ヤクザは覚悟の上で生きている。だから、護衛をつけたり、銃を持つだけなく、日々身なりを整えて清潔にし、いつ死んでも見苦しくないように心がけている。  彼らと理夏は違う。一般人(カタギ)だ……そこまで考えてから、眞尋は首を傾げた。 「ん……? そういや、お前ってカタギなんか……?」 「……たぶん……」  理夏の返事は頼りない。眞尋は「たぶんってなんだよ」と突っこむものの、返事はない。 「つうかさ、それ脱いだほうがいんじゃねぇのか。風邪ひいちまうって」  カーディガンはひどく湿っている。理夏は黙ったまま、膝を抱えて体育座りをしている。  眞尋は腕を伸ばし、理夏の肩を揺らした。 「なぁって……聞ぃてんのかよ?」 「……眞尋は、ヒかないのか」  雨の音にまぎれて、呟かれた言葉。  眞尋は首を傾げる。 「は? ヒク?」 「ヒかなさそうだな……眞尋なら。ヤクザの息子だし、遊郭で色んな人間見てるだろうし、好きでもねぇ男とヤって金稼いでんだよな……」  理夏は目を細める。穏やかな微笑だ。     
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