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詐欺の片棒を担がせるのもよくあるケースだ。
眞尋は後輩たちに注意する。
「だぁから、そういうもんにはあんま、手ぇ出さねぇほうが──……」
「着きましたっ!」
彼らはどこまでも無邪気だった。笑顔のまま、雑居ビルの前で立ち止まる。
五階建てで、表向きのテナントはスナック、フィリピンパブ、怪しげな回春マッサージ店。よくある場末の娯楽ビルだ。
建物に入っていく後輩たちの背中に、眞尋はため息を吐く。
(まぁ……俺がいたら、多少は守ってやれるよなぁ……?)
保護者のような気持ちで、後についていく眞尋だった。
◆ ◆ ◆
航大はスマホを出して、いまから入る旨を店に伝える。エレベーターに乗ると遠隔操作で勝手に動きだした。
五階のバーがカジノの入り口らしい。店のドアは頑丈そうな鉄扉──万が一、警察にガサ入れされた際に、塞いで時間稼ぎをするためだろう。
航大を先頭に中に入ると、本当にバーでしかなかった。適度に薄暗く、席はカウンターのみ。客はいない。
バーテンはふたりで、揃いのTシャツを着ている。ヤクザと関わっているのかもしれないが、末端構成員で、下っ端だろう。ガサ入れされたときのため逮捕用の人材だ。
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