第一章 夜半の邂逅 1

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 しかし、この店はどこの組の持ちものなのかと、眞尋は首を傾げる。賭博系のシノギはどの組団体もやっているし、大都市は縄張りが入り組んでいるから、把握しきれない。  眞尋の組ではないことは確かだが……。  席に座ることなく、航大は財布から小さなピンバッジを取りだし、カウンターに置く。それが『会員権』らしい。バーテンは手に取ってあらため、本物と認識すると航大に返し、にこやかに笑った。 「どうぞ奥に……」  航大はそれを襟につけた。店の奥のカーテンをくぐる後輩たちの後を追って、眞尋も踏み入る。  カーテンの奥は階段室になっており、見張り役らしき男が丸椅子に座り、退屈そうに週刊誌を読んでいた。彼のそばには店前・エレベーター内などを映した監視カメラの映像がいくつものモニターに映されてぎっしり並んでいる。  階段を下りていく眞尋たちに「ごゆっくり」とやる気なく、一応声をかけてくれた。  綾人の説明によると、カジノはこのビルの三・四階を使っているそうだ。四階はポーカーなどのカードゲーム。三階はルーレット。  眞尋たちはルーレットで遊ぶことにして、三階フロアに入っていく。窓はなく、絨毯は赤く、天井には安っぽいものだが一応シャンデリアが揺れ、バースペースもしつらえられ、きらびやかな雰囲気に作ってあった。     
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