第一章 夜半の邂逅 1

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 バースペースには、今日のフードメニューが黒板書きされている。こういった店はみんな食べ飲み放題だし、意外に美味かったりする。まずは腹ごしらえをするのも良いかもしれない……綾人たちははしゃいでいるが、眞尋はどうしてもルーレットで遊びたいというわけでもない。 「あー、そうだな、小腹空いてっし……お前らは先に遊んでろよ」 「えっ、いいんですか?」  眞尋は頷き、追い払うようにひらひらと手を振った。 「行ってこいって、俺も後で合流するからよー」  後輩たちは顔を見合せてから、笑顔になった。 「じゃ、お言葉に甘えて、先遊んでます!」 「稼いで、眞尋先輩に焼肉食わせますからっ!」 (……てめぇらなぁ、焼肉くらい、カジノで儲けなくても食えるだろーが……)  と思ったが、苦笑するだけに留めた。気合十分といった感じで肩を組む彼らが、微笑ましくもあったから口には出さない。  ひとり、バーカウンターの丸椅子に腰を下ろす。 「何飲みますか」と、バーテンから声をかけてくれたので、ビールと言いたいところだったが、綾人たちとの焼肉のために取っておき、ジンジャーエールにしておく。  煙草には火をつけた。セーラムライト。初めて煙草を吸ったときから、いくつかのメンソールを渡り歩いたが、高校に入ったころからセーラムに落ちついている。  注文したのは明太子の乗ったお茶漬けで、大根ときゅうりの漬物もついてきた。     
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