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ジンジャーエールとはちょっと合わない気もするが、メニューを見ていて食べたくなったのだから仕方がない。それにやはり下手な飲食店よりも美味しい。
割り箸とレンゲでちびちびと食べながら、ピアノの演奏を聴く。人々のざわめきが邪魔だった。もっと静かなところで耳を傾けてみたい……
しかし、奏者はここがどこであろうが、誰かが聴いていようがいなかろうが、関係なさそうにただ淡々と弾いている。
お椀を空にしてから、食後の一服でまたセーラムを吸っていると、フロアが騒がしくなった。
片隅に店員が集まって怒声が響く。客たちも何事かと見回したりしている。なんとなく、綾人と航大が心配になったので、眞尋は吸殻を潰した。
席を立って騒ぎの輪に向かうと、いつのまに駆けつけたのか、強面のスーツ連中が集まっている──明らかにヤクザだった。
悪い予感は的中し、彼らに囲まれているのは綾人と航大だ。綾人は襟首を掴まれている。
目にした眞尋は反射的に声を上げた。
「おいっ、てめぇ、俺の後輩に何してんだ!!」
綾人を締めあげながら、ヤクザは眞尋に怪訝な視線を向ける。
「あぁ?! 何だてめぇ? ガキどもの仲間か?」
とりあえずは綾人から手を離してくれたが、離すというよりも放るといったほうがいい。
綾人は絨毯に尻もちをつき、ゲホゲホと噎せだす。近くに立つ航大の顔色は蒼褪めている。
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