6・佐藤家の水田

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『そんなわけでよ、この傾斜でスピードがついたせいですごい勢いで落ちてな。よりにもよって田植えからそんなに経ってないこの時期の田んぼだ。 そしてお互いを守ろうと思ったから抱き締め合っててな。落ちたあとは身動きが取れなくて窒息だ』 親方は苦笑いで語ってくれた。窒息死とはさぞ苦しかったことだろう。 『今はもう苦しくないから大丈夫だ。さて、そろそろ俺らも成仏するか』 笑顔で隣の男性に話しかける親方。だが男性は渋い顔をしている。 『親方、申し訳ねぇがリュウが気になる。かわいい弟分だ。この人に憑いて行ってリュウを見届けてぇ』 なんだか怖い方の漢字で話された気がしたが、現場は目と鼻の先なので了承した。 『先に行ってるぜキョウ!早く糞ガキ共と一緒に来いよ!』 漢気溢れる言葉と共に、親方は笑顔で昇って行った。 『先生悪いな。まずは鈴木さんの家に行こうぜ』 キョウと呼ばれた男性と共に、向かいの鈴木さんのお宅へと向かった。 第二部へ続く
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