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風が空を抜けていく。
雲が押されて流れて、消えては浮かび上がる。
今日は天気がいい。
鳥が高く高く昇っていく青空に、何か昇天していくような気がして、気が遠くなった。
今日、私は死んだ。
ふう、と一つ口から吐いて、胸郭がいつもより深く下がると、腹のあたりが軽く感じた。
うなじを撫でると、短い髪がチクチク刺さる。
もう使わない髪留めを握りしめると、ぐっと痛みが残った。
この痛みだけは覚えていよう。
目の前の川面は、きらきらと揺らめいて、何もかもを流していく。下流へ、下流へ。
深いのか、浅いのかわからないけれど、とどまらずに海まで行くのだろう。きれいなその輝きの中に汚い淀みもあるんだろう。
その中に引っかかることのないように、祈りを込めて、髪留めを投げた。
願わくば、泡沫となって消えてくれますように。
そんなことはあり得ないと知っているのに、罪悪感と引き換えに、弧を描く。
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