なにもないにちようび

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とてもきれいなロングヘア。派手な明るい色でもないのに、夕日の切れ端できらきらと光る。 細い華奢な腕は、日々の部活で日焼けした自分のそれと比べると、オセロみたいに白い。 バナナムーンのように、張りのある微笑みの唇は、ここからでも艶がよくわかる。 その唇に愛らしく振れたのは、見たことのないあの人の顔、ずっと触れたかったその唇。 彼の指が彼女の髪をすきあげて、もてあそぶ。さらさらと宙に舞う毛先は肩に触れて、ガラスの響きをあげるようだ。 不意にバスが視界をふさぐ。 昇降口の扉を開くブザー音が耳を裂く。こちらの世界へ引き戻すように。 鞄に本と取りかけたスマホを押し込んで、バスには乗らなかった。 伸びてくる影から逃げるように、アスファルトを蹴った。
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