0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
とてもきれいなロングヘア。派手な明るい色でもないのに、夕日の切れ端できらきらと光る。
細い華奢な腕は、日々の部活で日焼けした自分のそれと比べると、オセロみたいに白い。
バナナムーンのように、張りのある微笑みの唇は、ここからでも艶がよくわかる。
その唇に愛らしく振れたのは、見たことのないあの人の顔、ずっと触れたかったその唇。
彼の指が彼女の髪をすきあげて、もてあそぶ。さらさらと宙に舞う毛先は肩に触れて、ガラスの響きをあげるようだ。
不意にバスが視界をふさぐ。
昇降口の扉を開くブザー音が耳を裂く。こちらの世界へ引き戻すように。
鞄に本と取りかけたスマホを押し込んで、バスには乗らなかった。
伸びてくる影から逃げるように、アスファルトを蹴った。
最初のコメントを投稿しよう!