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第八章 ゼウス、天から望む
雲の隙間を覗いているゼウスの元に、アフロディーテがそっと近寄った。
「ゼーウス様!またここにいましたか。その後、青年くんの様子はいかがですか?」
「あぁ、アフロディーテか。今日の青年は、昨日までと比べて、顔付きが違ってね…もしかすると、今日何かが起こるかもしれないな」
「本当ですかぁ! あれから、約二ヶ月…随分印象が変わりましたよね、青年くん」
青年は、いつもの駅に向かっていた。背筋が伸び、以前より逞しくなった身体が、何とも凛々しく見える。
最初に出逢った頃と比べると、確実にいい方向へ進化する事が出来ている青年の、懸命な努力が実を結んだ事を嬉しく思う。
「あれ、青年――いつもと違うホームへ向かっていますね?」
筋力トレーニングを終えたアポロンが、汗を拭きながら現れた。
「確かに…これは今日、彼女に声を掛ける気なのではないか!」
「きゃ!こっちまで緊張しちゃいますぅ!」
三人の神々は、鼓動を高鳴らせながら、息を呑んだ。
十七時二十九分――彼女が現れるのを不安ながらも、心待ちにしているように、青年は辺りを見渡していた。
「あ、来た!」
ゼウスの声と同じくして、青年は彼女が現れた事に気が付いた。
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