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第七章 ゼウス、天へ戻る
顔を青白くしたゼウスは、大きな叫び声を上げ、両手で頭を掻いた。それを見た三人は動きを止め、視線がゼウスに集中した。
「ゼウス様、どうか致しましたかぁ?」
「ヘラに…ヘラに離婚される!今すぐ天空へ戻らなくては!でも青年が…あぁ!」
未だ、青年には教えたい事が沢山残っている。恋する気持ちを持った青年に――何事も不可能な事など無いという事を未だ伝えきれていない。
しかし…ヘラに知られた今、暫く地の世界へ来る事は出来なくなる。
悲しみに満ちた表情をしているゼウスの前に、青年が背筋を伸ばして立ち、そっと手を取った。
「ゼウス様…奥様の所に戻ってあげてください。僕は…神の皆様のお陰で、僕はこの数時間で、自分の事が少し好きになれました。最初は夢なら覚めてほしいって思っていました。でも今…皆様が空へ戻る事を考えたら、何だか寂しくなってきました」
ゼウスは青年の笑顔を見て、思わず力強く抱き締めた。
「青年よ、有難う…その気持ちがあれば、君は大丈夫だ!暫くは地の世界へ来られないと思うが、天から青年をいつまでも見守っている。是非これからも、成長していく青年の姿を、私に見せてくれないか」
「勿論です、ゼウス様!ずっと僕を見守っていて下さい。自分に自信を持ち、今度こそ彼女に声を掛けてみます」
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