裁かれた欺瞞

1/4
前へ
/17ページ
次へ

裁かれた欺瞞

 翌日、弥八とお夕が寝静まったのを見計らって、辰吉は小雪の衣類と、竹で出来た水筒を手にすると、小雪の待つ滝元へと向かった。  その人形(ひとがた)は、先刻と同じ場所に横たわっていた。  辰吉は小雪をそっと手に取ると、ゆっくりと社へと向かう。 「どうするのですか」  小雪の声が、辰吉の頭の中に響いた。 「うん。あの社ごとぶち壊してもいいんだが、村人たちが苦心して建て直した社を破壊するのは忍びない。だから・・・・・・」  そうこうしている内に、二人は社に着いた。  辰吉は社の脇に回り、小窓をそっと開けると、中に小雪を差し入れながら水筒の水を掛けた。  見る見るうちに元の姿となった小雪に向けて服を投げ入れると、入り口のかんぬきを外すよう促す。  首尾よく辰吉が中に入ると、小雪に聞いた。 「で、地下室への扉は何処に?」  言われて、小雪はその場所を指し示した。 「でも、普段は離れで寝ているんじゃ」 「いや、奴が毎晩、村の女子(おなご)(たぶら)かしては連れ込んでいるのは確認済みだ」  小雪は目を剥いた。  いや、辰吉のその発言にではない。  言い終えてから変化していく、辰吉の姿。  始めは足から、そして徐々に全身が緑色に変わっていく。  
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加