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裁かれた欺瞞
翌日、弥八とお夕が寝静まったのを見計らって、辰吉は小雪の衣類と、竹で出来た水筒を手にすると、小雪の待つ滝元へと向かった。
その人形は、先刻と同じ場所に横たわっていた。
辰吉は小雪をそっと手に取ると、ゆっくりと社へと向かう。
「どうするのですか」
小雪の声が、辰吉の頭の中に響いた。
「うん。あの社ごとぶち壊してもいいんだが、村人たちが苦心して建て直した社を破壊するのは忍びない。だから・・・・・・」
そうこうしている内に、二人は社に着いた。
辰吉は社の脇に回り、小窓をそっと開けると、中に小雪を差し入れながら水筒の水を掛けた。
見る見るうちに元の姿となった小雪に向けて服を投げ入れると、入り口のかんぬきを外すよう促す。
首尾よく辰吉が中に入ると、小雪に聞いた。
「で、地下室への扉は何処に?」
言われて、小雪はその場所を指し示した。
「でも、普段は離れで寝ているんじゃ」
「いや、奴が毎晩、村の女子を誑かしては連れ込んでいるのは確認済みだ」
小雪は目を剥いた。
いや、辰吉のその発言にではない。
言い終えてから変化していく、辰吉の姿。
始めは足から、そして徐々に全身が緑色に変わっていく。
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