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統べられた村
--満水村。
その村は、四方を山に囲まれた、大きな盆地にあった。
東の山は特に標高が高く、冬季に降り積もった雪は、夏になっても雪解け水となって、その村が干ばつ被害にあう事は殆どなかった。
村には長がいるが、現在その村を仕切っているのは、長ではなく、村の東のはずれ、山の麓にある社に住まう神主であった。
実は満水村も、かつて干ばつに悩まされた年があった。
その時、龍神に祈願し、翌日中に雨を降らせたのが、その神主という事になっている。
神主は村民達から大いに感謝され、それ以来、この神主は、この地での絶対的な権力を握る事となる。
社の奥、東の森は聖地と位置付けられ、神主以外の立ち入りは厳に禁じられた。その神主の言であったことから、村人はみな、その言いつけを守っていた。
村はそのような地にありながらも、特に閉鎖的という訳ではなく、戦に敗れた落ち武者や、戦に巻き込まれ、家をなくした者も、分け隔てなく受け入れていた。
それは、その地の広大さ、農地に恵まれた地である事も大きな要因であるが、何よりそこに住まう人々の寛大さが何よりも大きい。
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