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「助けて・・・・・・ください」
その声は、耳からではなく、頭の中に直接語りかけてくるようだった。
辰吉はその声が、この人形からのものだと直ぐに悟った。
「助けるって、どうすれば?」
辰吉が問うと、その人形は、自分を滝壺に放り投げてくれればいいと言う。
流石に投げ入れるというのは憚られ、辰吉はその足で水面に近付くと、その人形をそっと水に浮かべた。
ソレは水を吸収すると、見る見るうちに大きくなり、やがて辰吉と同じ位の齢の少女と変貌を遂げた。
まだ肌寒い深夜であるのに、少女は更に滝壺深くまで身を進めたかと思うと、顔だけを覗かせて辰吉を見た。
このような状況にあっても尚、乙女の心を無くしてはいない、それは恥じらいの末でのことだ。
「お前、小雪・・・・・・だな」
辰吉が問うと、その少女は大きく目を見開き、やがて大粒の涙を流し始めた。
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