老人とアルバム

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今日、私は死ぬ。 生まれて80余年。色んな事があったわ。 そんな最期の時に、この思い出の詰まったアルバムを開く。 赤ん坊の私。それを抱く両親。私は両親に愛されて育った。 厳しくも優しい父。おおらかでいつも笑顔の母。2人は私の理想の夫婦だった。私も、両親のような夫婦になれたのかしら? 弟が生まれた時はまだ2歳だったから、覚えていないけれど、写真から両親の喜びが伝わってくる。私達姉弟、本当に愛されていたわよね、了平。 喧嘩もよくしたけれど、仲の良い姉弟だったわ。もう会えないのは寂しいわね。 優人さん。貴方に出会ってから、私の世界は光に満ち溢れた。少し大袈裟かしら?でも、それ位に素敵で、幸せな気持ちになったのよ。 2人でいろんな所に行ったわね。国内も国外も。貴方と見た景色、今でもよく思い出せるわ。 物覚えは悪くなってしまったけど、思い出はなかなか忘れられない。中でも感動的だったのは、やっぱり月の景色ね。まるで異世界の様だった。 宏祐。初めての子供だったから、生まれる前も大変だったし、生まれてからももっと大変だった。とてもやんちゃで、でも可愛くて仕方なかった。 反抗期には戸惑ったけど、素直な優しい子に育ってくれて、本当に嬉しかった。 美佳。女の子はやっぱり男の子とは違ってたわね。お爺さんお婆さんが、蝶よ花よと可愛がるのを止めるのは大変だったわ。 真ん中だったから悩み事も多かったみたいだけど、結局あまり話してはくれなかった。でも自分で選んだ道に進んで、立派に生きてる。それだけで安心。母さんの事は、心配しなくて良いのよ。 明里。末の子って本当に要領が良いのね。親より、上の子を見て育ったのかしら。 外国で仕事するって言った時は驚いた。でも、その時の目を見て確信したわ。この子はちゃんと覚悟ができてる。私が何を言っても無駄だって。父さんもそう思ったから、貴方のことを応援してたわね。
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