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3人の子供達は皆、良い人に巡り会って、素敵な家庭を築いてる。孫ももう7人。ひ孫が1人。いえ、もうすぐもう1人生まれる。顔が見れないのは、少し残念ね。名付けを頼まれたけど断った。だって、もうすぐ死ぬ人に付けられた名前なんて縁起が悪いじゃない。
アルバムを見てるのも首が疲れるわね。
ふと、顔を上げ、空を見る。
街は静か。車の音はしない。人の声も。
空には赤黒い塊。アレが、私を殺すの。
最初に観測されたのは半年前だったかしら。地球に接近する隕石があるって。
かなり遠くだったし、当たるわけがないって考える人がほとんどだった。
でも、隕石は順調に地球に近づいてきた。
人々は地球を捨て、新しい星へ移住する事に決めた。急ピッチで新しい宇宙船を作ったり、新天地へ何往復も人々を送ったり。
弟も子供達も、家族はもう全員旅立った。
でも、私はここに残ると決めた。この地球に。たくさんの思い出のある土地に。
もう、お婆さんだもの。今更新天地に行っても何もできることなんてない。なら、思い出のたくさんあるこの星で死んだ方がいい。
皆して泣いて止めてくれたけど、それでもね、決めたことだから。
テレビを点けても砂嵐。電気はあるから、思い出の曲を聴きながらアルバムをめくる。
あとどれ位こうして居られるのか分からない。そっと目を閉じる。
貴方に先立たれて5年。あの時、私すごく泣いたわね。
今日、私は死ぬ。
早く天国の貴方に会いたいわ。
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