遺書

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そんな風に思われていたことがショックだった。僕はもう返信を打つ気力をなくして、スマホの画面をただただ見つめた。 「親元を離れて大学に進学したら。好きな人と恋人になったら。大好きな恋人とセックスしたら。君はむなしさから逃れられると思っていたんだよね。でもいい加減に気がついた方がいいよ。君のその虚しさ、なくなる日は来ないよ」 みなとは断言した。スマホが不規則に震える、違う、僕の手が震えている。言われている内容より、みなとに言われているということが僕を打ちのめしていた。 「ことある事に死にたいって言うけどさ、その方がいいんじゃないの? その方がいいよ。これから先も同じことの繰り返しだよ。君は一生虚しさと生きるんだよ。一生ね。あと何十年も。だったらさあ……」 僕はもう、続きが読めなかった。スマホをベッドの上に投げ出した。今までの人生をふりかえった。 僕はそんなにダメなやつだろうか? 何年も仲良くしているネット友達のみなと。僕が死にたい、人生は無意味だって言う度、「死なないで」「意味を探そうよ」と声をかけてくれたみなと。そのみなとが腹の中では僕を笑っていたなんて。 僕はずっと、愛されたかった。愛されれば世界が良くなるって思っていた。世界が良くなれば自分も良くなると思っていたんだ。でも違った。もっと前に気づけたはずなのに、気づけなかったのは僕が甘えていたからだろうか。 この先何を手に入れても、みなとの言う通り僕は僕のままなんだろう。僕は僕のまま、虚しく生き続けるだけなんだ。何十年も。何十年も? なんて途方もない。
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