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  薄暗くどこまでも広い荒野に、川が流れている。 ぞろぞろとやって来る人々は、歩くまま、押されるままに、その広い川を渡って行く。 足をもつれさせ、人波からはじかれた自分は、座り込んだまま、ただそれを眺めている。 誰も口をきかず、何も見ていない。 ざわざわと耳鳴りのように聞こえているのは、足音か川の音か。 川の向こうは見えない。 ただ白くぼんやりとしている。 どこまでも続く川は、大地を二分し、あまねくその岸にはまだらに人が歩いて来る。 そして川を渡り、白に紛れる。 歩いてきた者にぶつかられた。 傾いだ首筋は、裂けている。 人波をよく見れば、脚の無いもの、ひどい疱瘡の者、痩せこけて腹ばかり膨れた者など、歩いているのが不思議な姿の者まで居る。 自分を見下ろした。 夜会服の腹が赤い。シャツにはいくつも穴があり、どうやら首にもある。 そうか、僕は死んだのか。 天を仰いだ。 しかしそこには神や天使どころか星すら無く、裁きの日が来たにしては静かだ。  
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