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私は緑の光に包まれてしまった。
光を解除しようと抵抗してみるが、もう私の一部はその男に支配されてしまっていた。
「吸弔腑刷っ」
男がその声を発した瞬間、私の身体は一気にその男の中に吸い込まれてしまったようだった。
男に飲まれる時、私の身体は小さく押し潰されているはずだったが、そうした感覚は無く、意識だけがそのまま残っている感覚だった。
そしてこれが在世から消える直前の感覚だった。
――私は、在世を生きる少年の無意識の中の意識から転世された、不在世と呼ばれるところで生まれた。
生まれた、という感覚は無く、気づいたらそこにいた、という方が感覚的には合っている。
不在世に生きる私は、どうやらその少年と親しい女の子が原型になっているようで、その女の子は私と瓜二つだった。
ただその女の子との違いは、私は殻のような存在であり、意識はあるのに意思はないという感覚を持っているようだった。
この感覚は、不在世に生きる存在からすればどうやら稀なようで、この少年のおかげで持つことができる感覚のようだった。
気づいた時からこの少年の側にいた。
そのほとんどが、その女の子のことを考えている時だった。
時々、その少年が寝ているときに私の意思で動いているときもあった。
もしかすると、意思で動いていると勘違いしているだけで、本当はその少年に動かされていただけなのかもしれないけど。
ある時、この少年は私と同じように不在世に生きる存在を在世に転世できる力を手に入れたようだった。
その時私は不思議な光景を目にした。
在世に転世されたその不在世に生きる人が在世で自由に動き回っているにも関わらず、不在世にも同じ人が残っているという光景を。
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