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帰宅すると、父と母が私の帰りを待っていてくれた。両親の座るダイニングテーブルの対面に座ると、父が言った。
「巧巳、どうだったんだ?」
「うん……それがさ……」
言葉を濁す私の様子を察してか、母が口を開いた。
「腎臓病?」
母は、私と同じ医療事務をしている。私と同じ病院ではないが、木更津の総合病院で働いている。昨夜、母には巧巳の症状を伝えていたので、病名を推測出来たのだろう。
腎臓病。正解。
「慢性腎不全だって……末期の」
両親を目の前にして、今まで必死に堪えていた涙が、堰を切ったように溢れてきてしまった。
「ふっ……うぅぅ、お母さ……わぁぁん」
私は火がついた子供のように声を上げて泣いた。子供の時以来だ。こんなに泣いたのは。
私の泣き声を聞いて、同居している祖母もリビングにやってきた。祖母は私の隣に座り、
「真美、どうしたんだい」
と、泣きじゃくる私の背中を擦りながら、私の顔を覗き込んだ。
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