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病状のこと、これからの治療のことを話し終えると、巧巳は伏し目がちに言った。
「あのさ……真美」
「ん?」
「俺……こんな病気になっちゃって……ほんとごめん」
低くくびれた抑揚のない声は、微かに震えているように聞こえる。
「なんで巧巳が謝んの?巧巳は何も悪くないじゃん」
「俺の腎臓、一生治らないんだよ」
「だからなに?」
「だからこの先も一生真美に苦労かけることになる……だからさ……」
巧巳の言いたいことは大方察しがついた。巧巳が病気になってしまったから、私に苦労かけるから__結婚をやめよう、そう言いたいのだろう。
「だから?だから結婚辞めるっていうの?」
無性に腹が立った。
十歳の頃からずっと巧巳の傍にいた。恋人として十年以上付き合ってきた。辛い時も、嬉しい時も、どんな時だって、いつだって巧巳と二人で分かち合い乗り越えてきた。
それが何?たかが病気くらいで私が結婚を辞めるとでも思ってるの?
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