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巧巳の気持ちは、わからなくはない。私だって突然同じ宣告をされたら、巧巳と同じように相手のことを想い、結婚をやめようって言うかもしれない。そしたら巧巳はきっと怒るよね?巧巳も今の私と同じ気持ちでいてくれるはずだよね?
不安、悲しみ、恐れ、絶望。そうした押し隠すことのできない幾つもの感情が顔に張りついている巧巳の両肩を揺らし、荒々しく声をあげた。
「巧巳、よく聞いて。もし、立場が逆だったら、私が巧巳と同じ病気になったら、巧巳はどうする?結婚やめる?私を見捨てる?」
巧巳は一瞬驚きで目を見開いた後、静かに首を振った。
「そうだよね?だったら、私だって同じだよ。巧巳を見捨てたりなんか絶対にしない。結婚だってやめない。巧巳が働けないなら私が働けばいい。それだけのことでしょ?」
巧巳は必死に堪えていたであろう涙を、みるみる目に滲ませて、透き通った涙を瞬きと一緒に弾き出した。
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