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私が泣いているうちに、父が祖母に事情を説明すると、状況を理解した祖母が冷たく言い放つ。
「そうか、巧巳君が……。真美ちゃん、巧巳君との結婚は考え直したほうがいい」
瞬間、涙が止まった。ガバッと顔をあげ、祖母に目をやると、祖母は心配の眼差しで私を見つめ、続けた。
「おばあちゃんは、巧巳君は好きだ。小さい頃から知っているしな。けどな?巧巳君以上に真美ちゃんが大事なんだ。真美ちゃんには幸せになってもらいたいんだ。巧巳君と結婚したらお前の苦労は目に見えている。孫だって……」
「お義母さんっ!」
祖母の言葉を遮るように母が声を荒げた。
「何もそこまでっ。真美だって、戸惑っているんです。まずは、真美の気持ちを聞きましょう」
頭が真っ白になった。まさか祖母がこんなことを言うなんて。昔から気が強く、物事をハッキリ言う祖母ではあったが、私のことはとても可愛がってくれた。そんな祖母が、こんな残酷なことを言うなんて。
私の為を想って、言ってくれているのはわかる。わかるけど、酷いよ。あんまりだよ。
私は、テーブルの上に置かれたティッシュで鼻をかむと、呼吸を整えるため数回深呼吸を繰り返し、対面に座る両親に覚悟の眼差しを向けた。
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