93人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「巧巳は今後、透析や腎臓移植をすることになる。過酷な闘病生活になると思う。だから、私はこれからも巧巳を支えていきたいと思ってる。巧巳との結婚もやめるつもりはないよ」
「真美ちゃんっ」
祖母は慌てて私の腕を掴んで懇願の眼差しを向ける。
「おばあちゃん、ごめんね。おばあちゃんにいくら言われても、私の気持ちは変わらないから」
祖母は何か言いたげに口を開いたが、その口を噛みしめると、小さなため息をついた。
そして、お茶を啜る父が、静かに湯呑を置いて言った。
「そうか、わかった。真美、精一杯巧巳君を支えてあげないさい」
「ありがとう、お父さん」
「だが、結婚はもう少し待ちなさい。巧巳だって、向うの親御さんだって今は結婚どころじゃないだろうし、巧巳の病状が落ち着いてから、もう一度ゆっくり家族を交えて相談したうえで、今後のことを決めていこう。な?真美」
「……うん」
お父さんの言うことは尤もだと思うから頷いたし、別に結婚を焦っているわけでもないのだけれど、なんだろうな、納得いかない自分がいた。
最初のコメントを投稿しよう!