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「お母さん……」
母の言葉は私の傷ついた心を、スーっと癒してくれた。
「おばあちゃんにも、お父さんがちゃんと話してくれるって言ってたから安心しなさい」
「ん、ありがと、お母さん」
母は、ベッドに横たわる私の額にコツンと、自分の額を合わせると、
「ほら、明日も朝から巧巳君のとこ行くんでしょ?早く寝なさいよ」
と、穏やかな笑みを湛えて部屋を出て行った。
母が居なくなり、静かに閉まったドアを見つめながら思った。
そうだよね。別に結婚をやめるわけじゃないんだもんね。少しだけ延期するだけ。希望を断たれたわけじゃない。
巧巳とはかれこれ十七年も一緒にいるんだもん。結婚が一年や二年延びたって、どうってことない。
__うん、どうってことない。
少し前、私の大好きなディズニーランドのシンデレラ城の前で、巧巳は私にプロポーズをした。どんなに待ち望んでいたか。どんなに嬉しかったか、今でも鮮明に覚えている。
今はまず巧巳の病気を理解して、巧巳の心の支えになることが先決だ。
泣き虫巧巳には、私がついていてあげなきゃ。
その夜、予定よりだいぶ遅くなってしまったが、巧巳に“おやすみ”ラインをしたのだが、既に寝ているのか既読はつかなかった。
※巧巳がプロポーズをした時の写真![image=510617534.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/510617534.jpg?width=800&format=jpg)
![image=510617534.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/510617534.jpg?width=800&format=jpg)
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