【3】~間宮巧巳side~

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【3】~間宮巧巳side~

__病院から帰宅した真美のラインを待っていたが、真美からのラインはなかなか来ず、俺は姉貴に電話を掛けた。個室だったため、電話は自由に出来る。 六歳上の姉貴。転勤族の旦那と結婚して、一歳半の一人息子と三人で今は大阪に住んでいる。 姉貴は、がさつで煩くて男っぽい性格で、昔から親の言うことを全然聞かない問題児で、俺は姉貴みたいな女とは絶対に結婚しないと決めていた。 だが、そんな姉貴が大好きだった。 小さい頃から共働きだった両親に変わって、姉貴は弟の俺をいつも連れて遊びに行った。友達の家に行くにしても、買い物に行くにしても。 俺が中学一年生の時、虫垂炎になって腹痛で苦しんだ時も、夜働く親に変わって一晩中お腹を擦って一緒に寝てくれた。 __『もしもし、巧巳?』 「ああ」 自分から電話しておいて、言葉が出てこない。 『どう?入院生活は』 いつもと変わらない明るく覇気のある声。姉貴にはラインで病状も伝えてある。 「うん……」 『ふっ、あんたの今の顔、めっちゃ想像つくわ。ったく、この世の終わりみたいな顔しちゃって。大丈夫だよ、いざとなったら私の腎臓一個あげるから』 電話越しの姉貴の言葉は、いつも通り男勝りでがさつだけど、それが逆に温かくて、やっぱり涙が出てきてしまう。
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