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押し黙る俺に気付いた姉は、少しだけ声のトーンを落として言った。
「なんでアンタなんだろうね。大阪に住んでなかったら、今すぐにでもアンタのとこに行ってやるのに……。とにかく“病は気から”ってよく言うでしょ?別に死ぬわけじゃないんだから、いつまでもシクシクやってないで、気持ちを切り替えなさいよ、わかった?」
はは、偉そーに。何様だよ。
「おう、サンキュ。また掛けるわ」
『うん、いつでも掛けてきな』
「じゃ」
『じゃーな』
ふ、相変わらず口の悪い女。簡単に腎臓あげるなんて言いやがって。
だが、姉貴の力強い声を聞いていたら、少しだけ不安が引いた気がした。
病気の宣告を受けてから、母は泣いてばかりだったから、いつも通りの姉貴の態度に安堵した。
__“病は気から”か。
まだ到底前向きには考えられないが、起きてしまったことはどうしようもない。いくら涙を流しても、泣き叫んでも、病気が治るわけではない。
今はまだ、とても笑える状態ではないが、泣くのはもうよそう。
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