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真美の慟哭は大きく鼓膜を揺らし、鼓膜が千切れそうだった。底知れぬ絶望と悲しみ。心を直接締めつけられたような苦痛と息苦しさ。苦い液体が喉から込上げてきて、吐き気をもよおす。
俺は、吐き気と涙を必死に堪え、真美お父さんとお母さんに言った。
「お婆さんの言うことは尤もだと思います。お婆さんを責めないであげてください。俺だって誰よりも真美には幸せになってほしいと思ってます。俺、お父さんの言う通り、前を向いて今やれることやっていこうと思います……だから俺が今出来ることは、真美を解放することです。お父さんとお母さんには、これまで本当に良くしてもらって感謝しかありません。ありがとうございました。失礼します」
「巧巳っ」
「巧巳君っ」
俺を引き止めようとする二人を振り払って、真美の家を飛び出した。
泣かない。泣かない。泣くもんか。
思いとは裏腹に瞼を越えようとする水分。唇を噛みしめると、口内で鉄の匂いが広がった。
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