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__次の日も、その次の日も、巧巳と連絡が取れることはなかった。
巧巳の決心は固い。それでも諦めきれない。どうしても巧巳と一緒にいたいんだ。
私は、巧巳と別れた三日後の夜、仕事終わりに巧巳の両親の店に寄ることにした。巧巳の様子が知りたかったから。
__「こんばんは」
巧巳の両親の店のスライド式扉を開けると、常連の客がカウンターに二人、小上りに三人座っていた。常連客の一人が私に気付き、
「お、真美ちゃん」
と、手を挙げる。
巧巳の親の店の常連客は、私もほとんどが顔見知りだ。
「どしたー?あれ、今日は一人かい?巧巳は?」
「あ、はい。今日は一人です」
その時、私に気付いた巧巳のお母さんが、厨房から暖簾をくぐり出てきた。
「真美ちゃん。どうしたの?」
「あ、少しお話したいことが……あっ、お忙しいなら待たせてもらってもいいですか?」
私の顔つきで何かを察したのか、お母さんは、「大丈夫よ。こっちにおいで」と言って、宴会用の座敷に私を招いた。
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