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座布団を出してくれたが、私は座布団には座らず、畳の上に直接正座した。
「あの、巧巳、どうですか?その、様子とか」
対面に座るお母さんに伺うと、お母さんは切な気に口角を上げた。
「そうね。元気ではない、かな。ほら、あの子人一倍ナイーブじゃない?」
「そうですか……」
「巧巳と何かあった?」
「……。」
お母さんには言えない。おばあちゃんが巧巳に言ったこと。
押し黙っていると、巧巳のお母さんが柔らかな瞳で私を見つめた。
「真美ちゃんには私もお父さんも本当に感謝してるの。真美ちゃんがいなかったら、巧巳はどうなっていたかわからないもの。本当は口止めされてたんだけど、二日前だったかな、真美ちゃんのお母さんから電話もらってね、話は聞いたのよ。巧巳も自分からは何も言わないし、私も知らないフリをしてるけどね」
お母さんは知っていたんだ。私と巧巳が別れたことも、全部知っているんだ。
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