【4】~徳田真美side~

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__「ごめんなさいっ」 溢れ出す涙と共に頭を下げると、巧巳のお母さんは私の肩に手を当てた。 「頭をあげてちょうだい。真美ちゃんはこれっぽっちも悪くないんだから」 「でもっ……」 巧巳が苦しんでいることには変わりはない。 お母さんは、太ももの上の、私の拳を優しく包んで言った。 「私は、巧巳の母親だから、勿論巧巳には幸せになってほしい。出来ることなら真美ちゃんと、って今でも思ってるのは事実。でもね、私は母親だから、巧巳が出した結論を尊重してやりたい。真美ちゃんが大好きだからこそ、病気になって一番苦しい時に、身をひいたあの子の気持ちをわかってやってほしい。本当ねごめんね。結婚まで決まっていたのに……本当にごめんなさい」 お母さんは、真っ赤に潤んだ瞳からハラハラと涙を流し、私に頭を下げた。 お母さんは巧巳の病が発覚してから、沢山の涙を流しているはずだ。私よりも、巧巳よりも、誰よりも。
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