第弐

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「貴方こそ、何で着物なんですか?」 そう、違和感とは、今ではとても珍しい着物を着ていたのだ。 「何でって…当たり前だろ?着物以外に何着るんだよ。…変な奴」 変な奴…?何処まで目の前の彼は失礼なのだろう。けれども着物以外に着るものがない…? 「とにかく!お前怪しいから屯所まで来てよ。拒否権はないからよろしくー!」 「えっ?ちょっ…ちょっと…!私、行くところが…!」 「はいはい。それより抵抗するなら切っちゃうから大人しくしといてねー」 ゾクリ…と背筋が凍る様な冷たい視線だった。先程までの彼と本当に同一人物かと疑う程に。 「あっ、そうだ。その箱、お前の?それも持って来てよ」 「えっ…あっ…はい…」 彼の言う箱とは、つまりはこのキャリーバックの事である。どこからどう見たって普通のキャリーバックなのだけれど。彼にはこれが何かは分からないようだ。 雛乃がキャリーを持ったのを確認すると、逃すまいと手首をギュッと掴まれ、最速引きずられているよな気さえする程早足で進んでいく。 引っ張られながらチラリと彼の腰辺りに揺れる物を見て、少なからず先程の言葉は冗談では無いと理解し、青ざめたのは言うまでもない。 「あ…の、着いていきますから、そんなに強く引っ張らないで下さい…!」 「あぁ、ごめんごめん。つい。んじゃ、大人しく着いてきてねー!」 最初に見た穏やかな雰囲気の彼の後を追いながら、辺りを見渡してみても境内なので情報は得られなかった。
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