第弐

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「まぁ、すぐそこなんだけどさ。」 そう言った彼に着いて境内を出た瞬間に、頭の片隅で思っていたことが現実に起きているのではないかと思った。 歩いている人は皆着物を着ていて、町並みはいつか見た時代劇のセットの様で。 電柱や電線なんてなくて、アスファルトではなくて、土で。 もちろん、車や自転車やバイク、信号機なんて物は一つもなくて。 もう夕暮れだろうか。辺りは薄暗くなっているのに、街頭の一つすらない。 もしかして、もしかするのかもしれない。けれどもこんなこと、誰が信じられる?よくある恋愛小説の中の主人公だって、安易に信用はしないでしょう? 通り過ぎる人が皆の視線が痛い。 でも、それ以上にドキドキと嫌な早鐘を打つ心臓が痛い。 そんな事を考えていると、ドンっと何かにぶつかった。最速、鼻までも痛いって訳だ。 「ちょっと、大丈夫な訳?着いたよ?」 ぶつかったのは、目の前を歩いていた彼の背中だった。そんな彼を横目に、目の前の建物を見詰める。ここは、確かーーーーーー 「壬生浪士組屯所…?」 「あぁ、俺達の屯所だよ」
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