第弐

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山崎の後を追って部屋を出た雛乃は改めて辺りを見渡す。ここが、あの、新撰組の屯所…八木邸。 現代では公開されているものの、雛乃はキョロキョロと隅々まで見ていた。 「神咲?そないにキョロキョロしとったらぶつかるで?」 山崎は前を向いたまま歩いている為にバレていないと思っていた雛乃。そんな山崎の発言にビクリと肩が揺れる。 「や、山崎さんって…背中にも目が付いてるんですか?」 「そないなやつおったら怖いやろ!ほれ、ついたで。ここ俺の部屋。早ぅ入り~」 寡黙な人だったと残されているのは間違っているのではないかと思う程に明るく、楽しい人だなと思った雛乃。「お邪魔します…」と遠慮がちに部屋へ入ると箪笥から一つ、綺麗な薄紫色の着物を取り出した。 「これが似合うと思うわ。言うとくけど、女装が趣味な訳やないで?仕事でちょろっと使うんやからな?」 「ふふっ。はい、わかってます。有難うございます。とても綺麗な着物ですね…。」 下に行くにつれて濃い紫色に染められ、赤い牡丹の花が所々にある着物はとても綺麗だった。 「あの…言いにくいのですが…着物を自分で着るのは…」 そう、巫女装束なら着慣れたものだが、着物は殆ど着ることがなかったために、着方がわからない。 「嘘やろ…。まぁ、あんまり着ぃひんゆうてたもんなぁ…。ほんならとりあえず、後ろ向いとくさかい、そこの襦袢羽織って。」 そう言われ、少し恥ずかしいと思いながらも服を脱ぎ、襦袢を羽織る。「出来ました」と言えば、「大きいなぁ」と苦笑いしながらも手際よく着付けてくれる。 「また、ゆっくり教えたるさかい、一人で着れるようになるんやで?」 「はい、有難うございます。」 そう微笑むと、「出来たで」と言われる。クルクルと回って確認している雛乃を見て、やはり女の子だなぁと微笑ましく思う山崎。
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