第壱

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「かわいい…!こっちおいで?」 暫く尻尾をゆらゆらとさせながら雛乃の事をジッと見ていた猫だったが、ゆったりと雛乃の足元まで歩いて来た。 そして、軽く頬擦りするとニャーっと可愛く鳴いた。 石段にしゃがみ込、頭を撫でてやれば目を細め気持ち良さそうにしている。 もっと撫でていてやりたいが、炎天下の中疲れていた雛乃は早く目的の神社に辿り着こうと猫を抱き上げ立ち上がった。 けれどもそれに驚いたのか猫が雛乃の腕から抜け出そうと暴れ、暑さにやられたのかフラ付き、バランスを崩し踏み外してしまう。 「あっ…やばい…落ちるーーーーーー!」 次に来るであろう衝撃に備えて固く目を瞑ったが、落下している浮遊感のみが身体を襲う。 そこで雛乃の意識は途絶えた。
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