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とても辛い……辛すぎる。
でも、いつまでもこうしていると、あの世に逝ってしまった嫁に心配をかけてしまう。
と言うか、顔面をグーで殴って来そうで怖い。
「……今までと同じように、簡単にここに来ることは出来ないけど。それでも……僕は君のことを忘れない」
「うん。……うん。それが良いよ。君の人生はこれからなんだ、私のことは頭の隅っこの方に置いておいて、新しい人と幸せになるんだよ」
「――じゃあ、僕はもう行くよ。今度会う時は、もっと立派になってから、ね」
「うん、楽しみにしてる」
この墓の下で眠っている嫁――彼女は今どんな想いで僕を見送るのだろうか。
勝手に街を離れることに怒っているかな?
それとも悲しんでいるのかな?
もしかしたら、こんな情けない男をもう見なくて済むと思って喜んでいるのだろうか。
……嫁のことだから、三番目はあり得るけど。
「――また、ここに来るよ」
「うん。またね、バイバイ。私はずっとここにいるから――気が向いた時で良いから……その綺麗な声をまた聴かせてね」
嫁の墓から遠ざかる僕に――でも。
『君のこれからに、幸せがありますように……』――と。
幻聴かもしれないけど、嫁の声が聴こえた。
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