雨が降る中で、彼女は

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 ――一匹のカエルと出会って、別れて十分ぐらい経った時。  雨の強さが変わった――とても強くなった。大粒だ。 「うひゃ~! すっごいキツイよ!」 「傘無しだったら大変な目に遭っていたなぁ。危なかった……」  最近雨が降っていなかったからだろうか。  天は数少ない機会の中で、今まで溜まっていた鬱憤を晴らすかのように雨を降らせるつもりらしい。  普通の雨粒サイズが大粒サイズに変わり、視界が悪くなる。  でも――それでも僕の歩みは止められない。  愛する嫁の為に、僕は行かなければいけないのだ――ッ!  ――とまあ、こんな風に心の中で叫ぶことしか出来ない。  大声で『嫁が好きだぁ!』って叫んでいるようなもので。  傍から見れば微笑ましいの一点だろうけど、当の本人である僕からしたら恥ずかしいことこの上無いことだ。  いえ、家の中じゃあ散々……これでもかって言うぐらい言っていたけど、流石に世間様の目があるところでは言わないだけであって。  別に僕は嫁が嫌いとか、そういうわけではない。  むしろ心の底から好きだ。今でも好きだ。
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