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祖母の家は古い。
母と暮らすアパート違い、一軒家だ。
まるで、社会の教科書に出てくるような藁葺きの屋根で、
土壁でできていて、土間まである。
外は蝉が大きな声で鳴いているのに、家に入ると音が遠のいて、ひんやりした空気に包まれた。
「いらっしゃい」
迎えてくれた祖母は着物姿だった。春夏秋冬、いつ会っても祖母は着物を着ていた。洋服を着ている姿を想像できないほどだ。
私は母から持たされたお土産を渡しながら、言われてきた通りに挨拶した。
「おばあちゃん、夏休みの間お世話になります。
母は時間が取れなくて来れませんが、これを預かってきました」
「まあまあ、ありがとう。
気を使わせて悪いわね。
麦茶でも飲みましょう」
祖母はお土産を受け取って、台所の方へと歩いていった。
もともと静かな家の中が、さらに静かになる。
ふと、視線を感じて後ろを振り返った。表に続く窓ガラスは下の方が磨りガラスになっていて、上にいくほど透明になっている。磨りガラスの部分に影が二つ見えた。
磨りガラスでよく見えないが、私と同じくらいの身長だろうか。片方は赤色、もう片方は水色の服を着ているようだ。
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