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窓ガラスに近づいていくと、影はどこかへ走り去ってしまった。きゃっきゃと笑う声が聞こえた。私と同じ年くらいだろう。だったら、あまり関わりたくない。
「どうかしたの?」
声を掛けられてビクッとしてしまった。
振り向くと、麦茶をのせたお盆を手に、祖母が立っていた。
「あの、窓ガラスの向こうに誰か、いたみたいで」
つい怒られるのが怖くておどおど答えてしまう。
祖母があら、という顔で窓ガラスを開けながら言った。
「おかしいわね?ここを人は通れないはずなんだけど」
窓ガラスの先はすぐ土手になっていて、川に繋がっていた。こんなところ、子供でも通れない。
おかしいな、見間違えたのだろうか。
「移動で疲れたんでしょう。麦茶で喉を潤したら、少し昼寝でもしなさいな」
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