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「……他人に掛ける方が高位、だよな? 」
「うむ、先代の魔法使いですら無声までは手に入れてはおらん。……何故そんなことを? 」
私は重い口を開いた。
「……私は距離は短いとはいえ、オヤジに外に一瞬で出された」
息を飲む音が微かに聞こえる。
「……なんであの役たたずだったはずのオヤジが高位魔法が使えるのか。腐っても勇者だからだと軽視していた。しかも、この残念装備まで着せ替えられてだ」
村長は難しい顔をして口を1文字に結んだまま、何かを考えていた。
ややあって。
「……何も浮かばん! 」
椅子から落ちそうになった。
まぁ、そうだよな。
「50余年あったんだ。どこかでなんかしらしていたのかもしれん」
まさかなー、速攻引退したくせに虎視眈々と魔王退治を目論んでいた……ならば、押し付けたりしないはずだ。
母さんに逃げられたりもしないはずだ。
因みに疑問に思っているだろう伏線を一つ、回収しておこうか。
《隣村に里帰り》しているはずの母さんは? と思うだろう。
考えてみてくれ。私の村が端にあるとは一言も言っていない。
則ち、両隣があるわけだ。
こっちは徒歩で易々と着けるくらいの村。
逆隣は徒歩で行けば3日掛かる。
母さんは安馬車でも雇っている筈だから、軽く見積もっても1日馬車に揺られるわけだ。
昨日の夜まではいたから、少なくともまだ馬車の中だろう。
帰ってこない可能性が高いのは、結婚してから1度だって帰っていないからだ。
よく50余年もあのオヤジに連れ添ったよ。
お疲れ様と言いたいよ。
てことで、本題に還ろう。
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