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かなり変則的だが、ファンタジー"ディスティナ戦記"の冒頭はどうにか書き終えた。
「魔王に殺害された勇者が復讐の為に、10年前にタイムスリップして魔王を倒す、か。盛りすぎだよ」
ベッドの中、慶太郎は更新ページを眺めながら首を傾げた。
「二人とも私達の子供だから、ぶっとんでるのも納得だわ。なんだかんだ言ってはしゃいでたからあながち失敗じゃなかったみたいね」
今のところは、と挿絵は付け足した。
更新されたのは一頁のみで、まだ読者もいない。子供たちが喜ぶ顔が見たいのはやまやまだが、書いて間もない投稿小説の現状はこう言うもの。
誰でも一番最初に直面する問題だが。
「読者が一人でも出来たら、きっともっとはしゃぐんじゃないか。ぼくもさ、初めて書いた作品に一人読者がついた時は夜も眠れないほど嬉かったもん」
慶太郎は、当時を思い出して首肯く。
「そうだったの、でも意外よね。仕事だけだと思っていなかったあなたに、こんな一面があるなんて。今まで私達に隠してたのはなんで?」
「君がやきもち妬くだろ?」
「バカね、スマートフォンの投稿小説にやきもちって私は子供じゃないんだから。だから私が知れば頭ごなしに反対するとでも?」
「違うのか?」
「私はね、逆にそうやって隠れてされた方が厭に決まってる。だってさ、それって"家族を信用してない"ってことでしょ」
「それは違うよ!」
「家族にも言えないようなことするのは、そうじゃないの? 信用してるなら堂々と言えるでしょ。何のタメの夫婦なの。でも、あなたは自分から告白してくれたら許してあげるけど、そもそもさ、それって人に隠すほど後ろめたいことじゃないと思うわよ」
「確かに、ね」
「なんか、あなたが誠実な男に見えて来た」
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